大岡裁き

生活苦からパンなどを万引きしたとして、窃盗の罪に問われた大阪府内の女性被告(47)に対し、大阪地裁は懲役1年執行猶予5年(保護観察付き)の判決を言い渡した。杉田宗久裁判官は言い渡し後に被告が退廷するとき、一段高い裁判官席から身を乗り出し、被告の手を握って「もうやったらあかんで。がんばりや」と声をかけた。

判決などによると、被告は今夏、府内のスーパーで、パンや清涼飲料水など食料品(約3000円相当)を万引きした。被告は生活保護を受け別の店で働きながら10代の2人の子供と一緒に暮らしていた。しかし、数年前に家出した夫の借金の返済に追われ、生活は困窮していた。

被告は00年にも同様の盗みの罪で有罪判決を受けており、犯行時は執行猶予期間中で、再犯で再び執行猶予となるのは異例だ。10月29日の判決公判で、杉田裁判官は「本来は実刑もやむを得ない」と指摘。そのうえで、▽子供にひもじい思いをさせたくないと考えて犯行に及んだ▽実刑になれば、学校に通う2人の子供の生活が行き詰まってしまう――ことなどを考慮し、被告にもう一度社会での更生の機会を与えた。

杉田裁判官に励まされた被告はその場で泣き崩れ、「ありがとうございます」と答えた。その後、被告は帰りを待つ2人の子供のもとに戻った。